⻘少年における新型コロナウイルスワクチンの追加接種の有効性について

あらゆる年齢層において、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)に関連する⼊院を予防する点でワクチン接種は有効です。しかしながら、⻘少年における新型コロナウイルス(以下、SARS-CoV-2)ワクチンの追加接種率は2022年12⽉5⽇時点で43.5%と、依然として低いのが現状です。また、⻘少年におけるCOVID-19 罹患時の症状は、成⼈と⽐較してより軽症である傾向にありますが、COVID-19 に罹患することは疲労感や頭痛、息切れなど⻑期間にわたるCOVIDの後遺症を引き起こす可能性があり、⻘少年の健康にとって重⼤な懸念事項です。しかしながら、SARS-CoV-2ワクチンの追加接種の有効性に関するエビデンスは限られています。

2022年11⽉12⽇に医学雑誌「Vaccines」に、13歳から18歳の⻘少年のSARS-CoV-2感染状況と追加接種を含むワクチン接種に関する調査結果¹が掲載されています。今回のコラムでは、その報告をもとに追加接種の効果についてご紹介したいと思います。

相⾺市では、2022年4⽉16⽇から5⽉7⽇の間に、⻘少年(13歳から18歳)を対象とし、BNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech製)を⽤いて⼤規模集団接種が実施されました。相⾺市における⾃治体を主体とした⼤規模集団接種は、2011年に発⽣した東⽇本⼤震災と続いて発⽣した福島第⼀原⼦⼒発電所事故の教訓をもとに実施された政策です。

相⾺市は、⽇本の予防接種法に基づき、住⺠の予防接種記録を保管しています。また、⽇本におけるCOVID-19 の全症例は、感染症法に基づき都道府県の保健所に報告されているため、相⾺市は公衆衛⽣上の観点から福島県と連携し、COVID-19 の感染者情報を収集しています。これらの情報をもとに、相⾺市⺠のワクチン接種状況をSARS-CoV-2感染状況によって分類・記述統計を実施し、そのデータを相⾺市新型コロナウイルスワクチン接種メディカルセンター(福島県)に報告しています。

今回の調査は、2022年5⽉7⽇時点における相⾺市内の13歳から18歳の全⻘少年における予防接種状況と5⽉14⽇から6⽉15⽇までのCOVID-19感染状況に関する記述統計データの提供を受け、統計解析を⾏ったものです。なお、本研究の観察期間において、⽇本におけるCOVID-19症例の99%以上がオミクロン変異株です。

その結果、合計1558⼈(84.9%)の⻘少年が2回のコロナワクチン接種を完了し、そのうち1128 ⼈(61.5%)が調査期間前に追加接種(3回⽬)を受けていたこと、2回接種のみの⻘少年430名のうちの11名、追加接種を終えた⻘少年1128名のうちの4名が、COVID-19に罹患していたことがわかりました。また、追加接種によるCOVID-19 の感染予防の効果は、2回接種のみと⽐較して 86.4%と推定されたことを報告しています。

発熱外来では、「まだコロナになっていない」ないしは「これまでに1度はコロナに感染したことがある」とおっしゃる患者さんが多いですが、稀に「すでに2回もコロナに感染しました」とおっしゃる⽅がいます。コロナの流⾏が始まってからおよそ3年が経過しようとしていますが、コロナ再感染によるリスクについては明らかではありません。そんな中、アメリカの退役軍⼈省セントルイス・ヘルス・ケア・システム(Veteran Affairs Saint Louis Health Care System)のBenjamin⽒らが、コロナに再感染することによるリスクを分析した結果²が、NatureMedicineに11⽉10⽇に公開されましたのでご紹介します。

⽶国退役軍⼈省の全国医療データベースを⽤いてコロナ感染経験がない5,334,729⼈、コロナ感染が1回の443,588⼈、コロナ感染が2回以上の40,947 ⼈を⽐較・解析した結果、繰り返しコロナに感染した⼈は感染経験がない⼈に⽐べて約2倍多く死んでおり、約3 倍多く⼊院していたことがわかりました。また、コロナに再感染した⼈は感染が1回である⼈に⽐べて肺、⼼臓、脳(神経)の不調をそれぞれ3.5 倍、3倍、1.6倍⽣じやすいという結果も得られました。筆者らは、コロナ感染を繰り返すにつれて健康不調の危険性は累積して上昇するようであり、すでに2 回や3 回とコロナに感染している⼈は、再感染予防のための対策が必要であることを指摘しています。

ワクチンの有効性は、免疫原性(抗原などの異物が、ヒトや他の動物の体内で免疫応答を引き起こす能⼒)の時間依存性と懸念される変異株の免疫逃避能⼒の両⽅により低下することが指摘されています。

例えば、⽶国のCenters for Disease Control and Prevention COVID-19 Response Team のJill ⽒らによるワクチンの追加接種による有効性についての報告³によると、2021年1⽉17⽇から2022年7⽉12⽇の期間にコロナの検査を受け、コロナ様の症状を認めて⼊院した18歳以上の成⼈893, 461 ⼈を対象とし、Pfizer-BioNTech 製またはモデルナ製のSARS-CoV-2 ワクチンによる効果の衰えを分析したところ、オミクロン期間において⼊院を必要とするコロナ感染症に対するワクチン効果は、3 回⽬の接種後2ヶ⽉以内には89%であったが、4〜5ヶ⽉までには66%にまで衰えていたことがわかったといいます。

追加接種の効果を含むワクチンの有効性については、さらなる⼤規模な⻑期間の調査が必要です。しかしながら、相⾺市の報告は、⼤規模集団接種が実施された相⾺市の⻘少年において、初回接種のみと⽐較した際のSARS-CoV-2ワクチンの追加接種によるワクチンの効果を⽰したものであり、⻘少年における追加接種はオミクロン株流⾏下におけるSARS-CoV-2 感染からの追加的な予防効果を得られることを⽰唆しています。参考にしてくださいね。

⼭本佳奈

参考⽂献

  1. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36423011/
  2. https://www.nature.com/articles/s41591-022-02051-3
  3. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36191948/


著者:⼭本佳奈(やまもと・かな)
略歴:1989年⽣まれ。滋賀県出⾝。医師。医学博⼠。2015年滋賀医科⼤学医学部医学科卒業。2022年東京⼤学⼤学院医学系研究科修了。よしのぶクリニック 医療コンサルタント・福島県立医科大学 博士研究員・医療ガバナンス研究所 研究員・AERA dot.  コラムニスト。著書に『貧⾎⼤国・⽇本』(光⽂社新書)がある。
活動:アエラドット その他へ定期的に医療記事を発信している
https://dot.asahi.com/columnist/profile/?author_id=yamamotokana

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