医学コラム2023年秋

2023.10.4
医学コラム

　9月中旬に入り、アメリカはサンディエゴにある大手ドラッグストアでよく見かけるようになったのが、「FREE FLU＆COVID-19 vaccines here（無料：インフルエンザワクチンと新型コロナウイルスワクチン接種はこちら）」という案内です。

　日本では基本的に、ワクチン接種はクリニックや病院といった医療機関で受けるか、新型コロナウイルスワクチンの時に実施されたような集団接種会場で受けるかのどちらかです。薬局では接種することはできません。

　しかし、アメリカでは医療機関だけでなく、ドラッグストア（薬局）でも接種することができます。しかも、インフルエンザワクチンやコロナウイルスワクチンだけでなく、帯状疱疹や肺炎球菌、B型肝炎など、16種類ものワクチンを、予約制で接種することができるようになっているのです（ただし、ワクチンが提供可能かどうかは規制に基づいて州によって異なる。各々のワクチンにより、年齢制限が適用される。認定された予防接種を行える医療従事者が勤務している場合に利用可能）。

　私自身、昨年の秋にコロナに感染した後、追加のコロナワクチン接種を受けました。しかし、昨年末には日本を離れてしまったこともあり、最後の接種から1年が経過しようとしています。そのため、アメリカでのこの夏¹のコロナの流行を、ワクチンによる免疫なしに乗り切ったことになります。

　実は、アメリカでは、この夏もコロナが流行しました。米国疾病管理予防センター（CDC）のデータによると、過去の夏ほどではないものの、入院数、救急外来受診者数、新型コロナウイルス検査の陽性率がわずかに増加したといいます。週当たりの新型コロナウイルス感染症の入院率は上昇を続けており、今年のコロナの流行のピークを迎える12月までに、現在の2倍になる可能性が最も高いと示唆されているのです。

　こうした状況から、米疾病予防管理センター（CDC）は9月12日、「新型コロナウイルスワクチン接種の対象となっている生後6カ月以上の人に対して、この秋と冬に向けて、オミクロン株派生型「XBB.1.5」に対応する最新の新型コロナウイルスワクチンの接種を推奨する」ことを発表しています。

　さて、最後のコロナワクチン接種から1年が経過してしまうことから、アメリカにいる私は、10月初めにコロナワクチンを、近所のドラッグストアで接種することにしました。

　早速、インターネットで、ワクチン予約のサイト²に進むと、「名前や生年月日、希望するワクチンの種類や、過去2ヶ月以内にコロナワクチンを接種したかどうか、郵便番号と都市名と州」を入力したところ、翌日から２週間分の予約可能な日時と、接種できるドラッグストアの場所が出てきたので、自宅から近いところの、都合のいい時間帯を選択するだけで、予約は完了。日本のコロナワクチンの集団接種の予約の時より、はるかに簡単に予約することができました。

　ちなみに、冒頭にも書いたように、アメリカのほとんどの保険プラン³は、最新の新型コロナウイルスワクチンやインフルエンザワクチンの全額を自己負担なしでカバーしています。そのため、ほとんどの場合において、無料になるとのこと。

　医療費が高いと聞くアメリカにいるからなのでしょうか。ワクチン接種による予防や日々の食事や運動といった健康管理を意識するようになった、今日この頃です。

⼭本佳奈

参考⽂献

著者：⼭本佳奈（やまもと・かな）
略歴：1989年⽣まれ。滋賀県出⾝。医師。医学博⼠。2015年滋賀医科⼤学医学部医学科卒業。2022年東京⼤学⼤学院医学系研究科修了。よしのぶクリニック　医療コンサルタント・福島県立医科大学　博士研究員・医療ガバナンス研究所　研究員・AERA dot. コラムニスト。著書に『貧⾎⼤国・⽇本』（光⽂社新書）がある。
活動：定期的に医療記事を発信している
1. アエラドットへ
（https://dot.asahi.com/columnist/profile/?author_id=yamamotokana）
2.毎日.ＪＰへ
(https://mainichi.jp/premier/health/山本佳奈の健康ナビ/)